INTERVIEW

VMP23ファイナリスト
Molt 代表 橘木良祐 氏

MIT-VFJ登録メンターによる徹底したメンタリング・アバイスによって、事業計画の見直しやブラッシュアップを行なうベンチャーメンタリングプログラムVMP。
2023年12月のVMP23でファイナリスト認定された皆さんへのインタビュー、第三弾は『ミズアブによる食品廃棄物のアップサイクル事業』を発表され、タスク賞、TORUS賞、佐々・藤盛特許事務所賞ほかを獲得された、Molt 代表 橘木良祐(たちばなき・りょうすけ)さんに登場いただきます。

まず、橘木さんの事業の概略を教えてください。
海外法人ということになるのでしょうか?

橘木

事業としては、食品廃棄物を回収し、ミズアブという昆虫に食べさせ、成長した幼虫を飼料として活用するというものです。
ミズアブは何でも食べる雑食性、早く成長する、たんぱく質が多い等の特性があり、世界中でその活用の研究、ビジネス化が活発に行われています。
今現在は、カンボジア国内の水産養殖業者にターゲットを絞って、試験的に実証などをやっているところです。
事業形態については、ちょうど今検討中で、まだ登記前なんです。
日本に本社を設け、カンボジアは支社という形態を想定しています。
カンボジアで飼料を生産販売していこうと思っていますが、そのライセンス次第で現地法人にするかどうかを検討しているところです。

VMP23に応募された経緯は?

橘木

VMP22のファイナリストの横山さんが友人なんですが、横山さんのFacebookの投稿を見て、メンタリングを重視しているプログラムがあるということを知りました。
いいなと思って応募しようと思ったのですが、それを見た時は、もうその日が応募締め切りだったんです。
直感で良さそうだなと思って、急遽、ばーっと資料を作って応募したんです。

何を期待して応募されましたか?改善したかったのはどんな点でしょうか?

橘木

ミズアブは、食品廃棄物を食べて、高タンパクの幼虫になるという面白い性質を持っています。
ただ事業化はどうすればいいのかというところが見当もつかなくて、事業化のヒントを得るために応募を決めました。

MIT-VFJのメンタリングを受けて、最初に感じたことを教えてください。

橘木

最初に、良い意味で、メンターの方たちがすごく熱いなと感じました。
担当メンターは西山さん、谷口さんで、事務局で礒谷さん、オブザーバーで理事の佐々さんもいらっしゃいました。

メンタリングの頻度と方法は?

橘木

合宿(2023年9月)までは、Zoomで1週間に1回くらい、2時間ほどでした。
合宿は徹夜で30分しか寝られなかったですね。
合宿後は、1週間に1回くらいで、3〜4時間ほど。
最終発表前は、追い込みをかけていただき、日を跨いで、5〜6時間ぐらいの頻度でメンタリングをしてもらっていました。
メンターの方達に直接お会いしたのは合宿と最終発表会の時だけです。

メンタリングを受けている間、困ったなと思ったことは?

橘木

毎回宿題をメンターから出されるんですが、それをこなすのに必死でした。
それに加えて、我々は、経営のビジネス知識が乏しく、基礎の基礎から調べながらやっていくということが大変でした。

3ヶ月間メンタリングを受けた一番の成果はなんでしょうか?

橘木

メンターとは、合宿まではビジネスモデルの話は一切しなかったんです。
ビジョンをまず作ろうと考えました。
ゴミを減らすとか、タンパク質危機を解決するとか、そのようなビジョンも考えられる中で、何が自分の中で1番ピンとくるのか考えました。
私は、虫とか生き物が好きなので、その可能性を人間社会に役に立てたいというのが1番の想いだと気がつき、今のところはそれをビジョンとしてフォーカスしています。
「蟲の真の価値を追求し、社会に役立てる」というビジョンを作りました。
「蟲」という漢字はうごめく生物のことを意味します。
将来的には様々な生物を対象にビジネスを行いたいですが、まずはミズアブにフォーカスしています。
その結果、その後の意思決定が楽になっていき、それが1番良かったことだと思います。

ビジョンを作った後は、ターゲットを絞ることを考えていきました。
例えば昆虫食ということも考えられますし、犬猫や爬虫類のペットフードにすることもできますし、豚などの家畜の餌にもできるので、いろいろなプロダクトが考えられました。
私は前職でキャビアの養殖をしていた経験があり、また、私が居住しているカンボジアでの利点を生かして、淡水魚の飼料に注力していこうという意思決定ができました。

ミズアブの栄養価などについては、学術的な面では、検索すると論文もいろいろ出てくるので、検証や情報収集もしてきました。
調べていくと、淡水魚は、もともと自然界で虫を食べているので、海水魚よりも昆虫食のパフォーマンスが良いということがわかり、そこをターゲットにすることにしました。

最終発表会でのコメンテーターによる質問やコメントも併せ、VMP23への参加は、今後の貴社の発展に、どのような変化をもたらすと思われますか?あるいはどのように変化させたいですか?

橘木

とても貴重で素晴らしい機会だったと思っています。
VMPが終了した後でも、審査員の方に相談に乗っていただいたり、理事の方に事業に関連する企業の方を紹介していただいたりしていて、今でも大変お世話になっています。
さらに、私はZoomでメンタリングを受けていたのですが、許可をいただいて録画をして、その録画を散歩中とかにずっと聞いていました。
今でも時々聴いてます。

最終発表会ではコメンテーターが様々なことをコメントしたと思いますが、その中で心に刺さったものや、これはぜひ実行していきたいなと思ったものはありますか?

橘木

竹山さん(※)が、カンボジアは市場としては農業大国であり、ニッチで開拓されていない分野なので、結構いいんじゃないかとおっしゃっていました。
私がカンボジアに住んでいるから、カンボジアでやるみたいな事業理由だったんですが、その言葉を聞いてやっぱりカンボジアで市場は合っているんだということを自覚して、背中を押されたような感じがしました。

※竹山徹弥氏 VMP23コメンテイター。株式会社タスク代表取締役。
https://www.ipo-house.co.jp/

これからどのように事業を発展させていきますか?

橘木

1年ごとの事業計画を立てていて、最初のうちは小規模なパイロットから始め、その後大規模な生産になっていく計画です。
蟲は気持ち悪いと言う人の認識を、5年後には昆虫食昆虫飼料が当たり前になっていたり、蟲は社会やビジネスにも役に立つんだなと思ってもらえるように、世の中の認識を変えることができたらいいなと思っています。

貴社の目下の課題は?

橘木

課題だらけです。
まずは、ラボ(小規模実験のための施設)を作るような計画を立てています。
建設費用はVMP23でいただきました賞金を使います。
その上で小さく試験生産してしながら、大規模生産をするための資金調達や、ビジネスパートナー探しを行っていこうと思っています。

自分たちと競合他社と違う部分がないと資金調達は難しいと思うのですが、御社と競合の差別化というのはどのようなところですか?

橘木

技術的な面での差別化というよりは、有機的な面で差別化したいです。
例えば、現地パートナーとしっかり提携するとか、養殖業者さんと一緒に検証してそのニーズを捉えていくようなことで差別化を図っていこうと思っています。

ボランティアをベースとしたMIT-VFJの活動に対し、期待されることがあれば教えてください。

橘木

本当にメンターの方々にはお世話になりました。
大変なご苦労があっただろうなと思っています。
メンタリングの時にはすごく厳しいことも言われましたが、その皆さんや関わっていただいた方に良い報告ができるように頑張りたいと思います。

今後、VMPに応募を考えている方たちへ、ひと言メッセージをお願いします。

橘木

我々は右も左もわからないような状態だったので、ビジネス計画の初期から相談に乗っていただき、方向性を定めることができました。
事業の初期の方に特にお勧めしたいと思っています。

これから橘木さんが築いていくのはどのような未来ですか?

橘木

弊社は、社会課題に対して蟲の特性を上手くマッチングさせて、ビジネスを通じて社会実装していきます。
昆虫は100万種いるけれど、人間社会にうまく役立てられているものは意外と少ない。
昆虫は可能性の塊だと思っています。
我々は、蟲を活用することでハッピーな未来になるような社会変革を起こしていきたいと思っています。
猛獣使いならぬ、現代の「蟲使い」としてこれからも活動していこうと思います。

 

橘木 良祐(たちばなき りょうすけ) 氏 プロフィール

  • 九州工業大学卒
  • 宮崎県椎葉村にて、キャビアの養殖・加工を行う
  • カンボジアに移住し、昆虫ベンチャーでコオロギの養殖・研究開発を担う
  • ミズアブの昆虫飼料事業を構築中。
  • 経済産業省・JETRO主催 始動 Next Innovator 2022に参加。
  • VMP23でファイナリストに選出され、
    タスク賞、TORUS賞、佐々・藤盛特許事務所賞ほかを受賞

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