MIT-VFJは24年間にわたり、毎年継続的にメンタリングプログラム※を実施しています。
事業を成功に導くために、MIT-VFJ登録メンターが、応募者のファイナリストに伴走しながら徹底した事業計画の見直しやブラッシュアップを行う、無償のプログラムです。
※ビジネスプランニングクリニック&コンテスト(BPCC)、現在はベンチャーメンタ リングプログラム(VMP)
今回のインタビューは、今年からVMPのスポンサーとしてご協賛頂くことになった株式会社識学の代表取締役、安藤広大(あんどう・こうだい)社長に、事業を起動に乗せるために大切なことなどを伺います。
識学とは人間の意識構造に関する学問・ロジック
- 大野
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今日はお忙しい中お時間を頂戴し、誠にありがとうございます。
そして『パーフェクトな意思決定』(ダイヤモンド社)の出版、おめでとうございます。
売れ行きはいかがですか。
- 安藤
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売れ行き良いって聞いてますよ。
書店のランキングなどにも出てくるので結構売れているんじゃないですかね。
- 大野
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素晴らしいですね。
私も拝読しました。とても読みやすいし、「初めに」だけでも読んでもらいたい人がたくさんいます。
- 安藤
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そうですか、ありがとうございます。
- 大野
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安藤さんは既に識学メソッドに関する本を複数出版されていますが、中でもベストセラー3部作*に比べ、本書はどのような位置づけで執筆されたのでしょうか。
*『リーダーの仮面』(プレーヤーからマネジャーに頭を切り替える思考法)、『数値化の鬼』(仕事ができる人に共通する、たった1つの思考法)『とにかく仕組み化』(人の上に立ち続けるための思考法)
- 安藤
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『リーダーの画面』はマネージャー・中間管理職向け、2作目の『数値化の鬼』は一般社員・プレイヤーに向けという形で作り、最後は経営者向けに作ったという感じなんですけど。
位置づけというか、全て連動している感じではあるんですが、編集者から「意思決定っていうテーマで書いてくれませんか」みたいなことを言われて、それだったらまた違う角度から、と思って書きました。
- 大野
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ではその三部作を先に読んでおいた方がいいですか。
- 安藤
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いや、そんなこともなくて、意思決定はリーダーだけではなくて、みんな日々意思決定の連続だと思いますので、そういった意味では単独でも読める本なんじゃないかなと思っています。
- 大野
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商品を販売している者にとっても、意思決定しないお客さまが多いので(笑)
ところで識学とは何か、まだご存知ない人に、分かりやすく簡単にご説明頂けますでしょうか。
- 安藤
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いつも話しているのは、識学とは人間の意識構造に関する学問・ロジックだと言っていて。
意識構造は何かというと、人が物事を認識して行動に移るまでの間のことであると。
物事を正しく認識することができれば、正しい行動が取れますが、認識を誤ると行動を誤ってしまう。
認識の誤りのことを日本語で誤解とか錯覚と言うと思うんですけど、要は識学とは何かということを一言で言うと、「人がどういうふうに誤解や錯覚を起こして、そしてどうすれば誤解や錯覚を起こさないのかっていうのを体系化したもの」です。
- 大野
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その識学を導入するお客様に対して、確か『週刊ダイヤモンド』に「識学は組織の整体師」みたいなことが書かれていました。
それがわかりやすくて、そのあたりの切り口からちょっとご説明いただけますか。
- 安藤
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要は組織に発生している誤解や錯覚というのが、人間の身体でいうと歪んでることだと思っています。
身体に歪みがなくて誤解や錯覚がないというのは、元の位置に戻っている状態というか、無駄な動きをしている部分がない状態で、それを作ることを僕らがやってるという感じです。
それを「整体師」と表現させていただきました。
識学自体は誤解や錯覚の発生の仕組みを体系化したものなのですが、僕らが提供しているサービスというのは、その識学を使って組織から誤解や錯覚を取り除くことをやっていて、整体師で言うと身体の歪みを治すというのと同じ作業という感じです。
識学の対象者は経営者
- 大野
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識学を導入する、その対象はどういう人になりますか。
- 安藤
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日々の仕組みを改善していくということをやっていくので、学んでいただく対象となるのは、日々のルールを作る側の人たちです。
なので、経営者とか管理職の皆さんが対象になってきます。
- 大野
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特に人事部とか管理部とか、そういうことでもないわけですね。
- 安藤
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ないですね。 人事部の方が対象になることもありますが、でも基本的には日々のマネジメントをされている方々になります。
- 大野
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そうすると例えばMIT-VFJは起業家を支援するグループなのですが、当然対象は経営者なわけですね。
- 安藤
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はい、よほど大きな会社以外は、経営トップが対象になってきます。
本当に大きくて、本部長がカンパニー制ぐらいの感じのサイズであれば、営業本部・各本部長から識学を受けていただくパターンもありますけれど、基本的には、ベンチャーだと経営トップから受けることがほとんどです。
- 大野
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経営トップがまず受けて、そしてカスケードのように三角形の組織に行き渡らせるという感じでしょうか。
- 安藤
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そうですね。 会社全体の上位20%ぐらいの人に受けていただくぐらいのイメージかなと思います。
- 大野
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なるほど、わかりやすいですね、ありがとうございます。
識学を事業化するスタートは順風満帆
- 大野
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識学というセオリーをメソッドとして事業化されるのに、たいへんなご苦労があったのではないかと思います。
ご自身が識学に出会ってから、事業として立ち上げるまで、どれくらいの期間を要しましたか?
また、ご苦労話など、心に残るエピソードがあればご紹介ください。
- 安藤
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僕がこの識学というロジック自体を学んだのが、2012年の末から2013年の前半にかけてです。
個人事業主で独立したのは2013年の7月です。
そのときは今みたいな形ではなくて、僕自身もいわゆるセオリーというか、理論を学んだ側だったので、それを使って組織を改善するっていう業務委託みたいな形で、ある会社の事業部を見させてもらったんですね。
初めてのことだったので、今のようにロジックをお伝えして、コンサルするっていうような感じではなかったんですけど。
そこで3〜4ヶ月、自分なりにいろいろやってみて、そこで会社が変わっていく、組織が変わっていく様を理解して、繰り返し実体験して。
半年ぐらいですかね。
そうしたら、そこの事業部の業績が急激に上がりました。他の部署にも展開してほしいって言われたのですが、全部業務委託の形で自分が仕切るわけにはいかないじゃないですか。
なので他の部署への展開は、やはり今のサービスに近いコンサルや研修という形でやっていかないと、自分が手を動かさなければならないので。
そこである程度、今に近いカリキュラムが出来上がったっていう感じなんです。そのカリキュラムになったものを、東京の会社も2社ぐらいやってみました。
要は自分が手を動かすわけじゃなくて、お客様である経営者に教えるっていう形のスタイルで、2社とも業績上がったんですよ。
それである程度のカリキュラムが出来上がり、今の会社を作ったという感じです。
それが2015年の3月です。
その時点では、ある程度商品化されたところでスタートできたっていうのは結構大きかったなと思います。
僕は元々ずっと携帯電話業界にいまして、識学に出会う前にイーアクセスという会社からヘッドハンティングされたのがきっかけで前職を辞めています。
ところがイーアクセスがソフトバンクに買収されたので、それで僕はイーアクセスへ行くのを止めて、今の仕事を始めたんです。
ソフトバンクの割と要職の営業責任者クラスに、僕を引っ張ってくれた当時イーアクセスの営業トップの人が今でもいるんです。
今でも専務やってるんですけど、その人が「記念発注」してくださったんです。
- 大野
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素晴らしい!
- 安藤
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1000万から1500万円ぐらい一気にドカンと発注してくれて。
そこで僕も経験を積めましたし、現副社長の梶山もそこで教える経験などを積めました。
キャッシュフローも楽になったので、そういうところも重なって、実はあまり苦労していないんですよ。
- 大野
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なんと、そうなんですか! 順風満帆!
- 安藤
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まさに順風満帆だと思います。
心に残るエピソードは短期間で急成長したスタッフ
- 大野
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素晴らしいですね。 では、ご苦労話はあまりないかもしれないけれども。
- 安藤
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私はどちらかというとこの直近2年間ぐらいの方が苦労しています。
創業時は本当に苦労しなかったんです。
- 大野
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そうですか。 その「記念発注」は、すごく大きなエピソードだと思いますが、他に何か心に残るエピソードはありますか。
- 安藤
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探し出せばいくらでもあるかなとは思うんですけど、そうですね。
今でも営業の責任者をやっている和田垣という者がいて、彼は1年目にいきなり識学に入りたいって言ってきたんです。
もちろん募集も出していましたが、なんかあまりパッとしない。
当時は部長職以上の経験者だけを採用しようと思っていたのですが、彼は当時課長職だったので「君は対象外だ」と言ったのですが、どうしても入りたいと食い下がってきました。
当時、彼はパーソルという会社の課長をやっていて、年収600万くらいもらっていたようですが、「480万までなら出す」ということで採用しました。
そんな彼が2年目に大爆発しまして、営業の柱として一番収益を稼いでくれたんです。
採用時にそこまで期待しなかった人が中心になってくれて、そういうところは大きかったなと思います。
- 大野
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どうしてその人はそんなに火がついたんでしょうね。
- 安藤
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彼は向いていたと思うんですよね。
感情的にならずに実直にコツコツできるタイプなので。
決して営業の能力が高いとは思わないのですが、どんどんお客様からの信頼を得て、すごく大きな発注をたくさん取ってきてくれた。
- 大野
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営業能力あるから受注してこられたんだと思いますけれども。
- 安藤
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そうですね、でもいわゆるコミュニケーション力がすごく高いというような感じでもないんですけどね。
正攻法ではない施策 マーケットにライバル視させる
- 大野
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直近2年間ぐらいの方が苦労があったと先ほどおっしゃっていましたが、今のような規模になるまでに、どういう努力や工夫などをされましたか?
- 安藤
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初めは実績がないと駄目だというところがありましたので、コツコツ1社1社の導入での業績を上げていきました。
上場までは、7割ぐらいが紹介での発注でしたので、しっかり紹介がいただけるようなサービス提供をしていたというのが大前提になっています。
そこからWebマーケティングを開始したときには、正攻法ではなく、何かキャッチーな比較対象のガリバーがいて、そこと比較されるようにしようと試みました。
要は、僕らはまだ吹けば飛ぶような規模の会社だったんですけど、当時リンクアンドモチベーションという、マンモスというかガリバーみたいにでかい会社があったんです。
そこと識学が比較されるように。
そういうことを意識して、何か、そっちを否定するような、そっちが反応するような、そっちのファンの人たちが何か反応するような、そんなマーケティングを心がけました。
- 大野
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よく海外では、例えばアメリカなんかで、競争相手の商品をけなしたりする宣伝手法がありますね。そういうことでしょうか?
- 安藤
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それに近いですね。
直接的にけなすというわけじゃないんですけど、概念を否定するというか。
要は電通と博報堂じゃないですけど、僕らと相手では全然サイズが違うんですが、でも比較対象になることで、識学派、リンモチ派みたいなことができ上がったら、僕らからしたら勝ちじゃないですか。
要は、向こうは莫大なマーケットを持っているわけなので、そのマーケットの半分とは言わないにしても、3割が来ればこっちの勝ちなので。
だからマーケットからライバルだと認識されるようにしたんです。
顧客の信頼を得て紹介発注に繋がる、対価を超える有益性
- 大野
-
なるほどね。
先ほど紹介発注とおっしゃいましたけれども、ベンチャーで会社を立ち上げて、自社の商品をたくさん売っていきたという方々を私達は相手にしているわけですが、なかなかお客様を増やしていくことができない人が多いですよね。
その中で紹介されるということは、安藤さんご自身のお人柄とか、識学のメソッドに対して、いいと思ってくださった人たちが多いと思うんです。
何をすればそういう紹介発注をしてもらえるようになるんでしょうね。
つまり、一般のベンチャーの人たちは良い技術を持っていても、なかなかマーケットで広がっていかない、浸透していかないケースがすごく多い。
何かアドバイスあればお願いします。
- 安藤
-
紹介が出るということは、要は顧客が払った対価以上のものがあったと顧客が認識するということですね。
要はそういうことじゃないですか。
紹介というのは、顧客にしてみればプラスアルファの作業なので、対価通りのものだったら、それで特に何も動かないんです。
しかし、対価以上の満足度があれば、僕らと付き合いを続けていきたいと思い、何かしらの有益性を発揮してもいいということで、自分から紹介してくれるパターンも結構多かったのです。
僕らからはお願いしていないのに。
これは何かというと対価を超える有益性なわけですよ。
要は安かったってことですね、結果的に。
だからそこをお客様に認識いただけるかどうかが、一番のポイントだと思いますね。
思った以上にすごくよかったよとなったら自慢したくなるじゃないですか。
こんないいもの買ったんだよ、俺って、と。
サラリーマンから起業した心理状態
- 大野
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なるほど、すごく大事なポイントですね、ありがとうございます。
サラリーマンから起業された訳ですが、背中を押されたきっかけがあればご紹介ください。
自分で会社を起こすには、大きな決断が必要です。
『パーフェクトな意思決定』にも書かれていますが、どんな心理状態でしたか。
- 安藤
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まず大前提で言うと、僕は、親父がラーメン屋で、おじいちゃんは箱の会社をやっていました。
二人とも、一応経営はやっていたのですが、おじいちゃんも箱の会社を潰していて、親父もラーメン屋が全然うまくいってなくて。
もう赤字で借金まみれで。
だから僕は経営者をやりたくないと思っていたんですね。
親父の借金にだいぶ苦しめられたので。
ですけど、本当にこの識学という考え方に出会って。
さっきも言ったように前職を辞めて。
その前職というのは、取締役で、会社のナンバー3のポジションでした。
そこからイーアクセスに転職するはずが、行かなくなったので、普通の転職はもうできない状態になっちゃってる。
そんな中でこの識学と出会って、すごいなと思い、これをやっていこう思ったのが1つのきっかけでしょうか。
前職が携帯電話業界向けの派遣会社でしたので、そこの業界とかそこの携帯電話業界、通信業界では、僕は割と有名人だったんです。
選択肢としては、そこの業界に戻って子会社役員になるとか、そういう話はいくつかあったんですが、そこではなくて、識学を広げるという仕事がしたいと思ったのがやはり何よりも一番大きいと思います。
識学のミッション
- 大野
-
なるほど、それがミッションですよね。
ちなみに識学のミッションをぜひご紹介ください。
- 安藤
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「識学を広めることで人々の持つ可能性を最大化する」という企業理念ですね。
- 大野
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「人々の可能性を最大化する」というのが、私はとっても好きです。
- 安藤
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ありがとうございます。
2年目ぐらいに起業当時作った企業理念が何かしっくりこないと思い、作り直したものなんですよ。
- 大野
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それは誰かコンサルタントの方に言われたとかではなく、自分たちで?
- 安藤
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自分自身が、です。
何かパッとしないというか、何かもっとちゃんと表現したいなと思って。
- 大野
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私も経営アドバイザーとして仕事をしてきた中で、ミッションを言語化するってことをよくやってきました。
その内の1つで、例えば肌にブツブツができたりすると、何もやる気がしなくなっちゃう。特に女性は人前に出るのも嫌になっちゃう。
その肌を綺麗にすることで「人々の可能性を最大化する」という言葉がありました。
それで識学のミッションに触れたときも、素晴らしいと思いました。
- 安藤
-
ありがとうございます。
識学がすんなりと乗り越えた上場の2つのハードル
- 大野
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例えばソフトバンクから買収かかったりしませんかね。
- 安藤
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いやいや、しないですよ(笑) 僕らでは規模が小さすぎます。
- 大野
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いや、わかりませんよ。 コンサルティングファームは上場するメリットがそれほど大きくないと一般的には認識されているようですが、設立後わずか4期目で東証グロースに上場されました。
最初から上場を目指されていましたか?
- 安藤
-
そうですね。
上場を、とは思っていましたけど、上場がどういうものかとか、詳細まで理解していたかというと、全く理解していなかったんです。
でも、どんな企業でも言うじゃないですか、上場を目指し頑張りますって。
そのレベルですね、初めの1年目は。
- 大野
-
でも、なかなか大変だと実際に聞いているので、すんなり上場できたというのは、やはり相当頑張られた結果ではないかと。
やりたいと思っても、できない会社が結構多いと思うんですけれども、どうしてそんなにすんなりいったのですか。
- 安藤
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上場って、大きくいうと、2つのハードルがあると思っています。
1つは上場審査に耐えうるサービスがあるかどうか。
要は成長性のあるサービスがあるか、マーケットのニーズに合致したサービスがあるかどうか。
それに関しては、僕らは識学というコンテンツを持っているので、あまり苦労はありませんでした。
次にやはり上場審査で引っかかってくるのは、ソフトのガバナンスとか、そういう組織体制のところです。
ここに引っかかってくるというのが、実は結構多いんですよね。
それは組織がしっかりできないから、売り上げが伸びないっていうのもありますし。
社内の統制を取れないとかということで、売り上げは伸びているのに上場できないとか、結構聞く話です。
ただその組織に関しては、僕らは組織統制のプロなので、そこに関しても全く苦労しなかったっていうことでして。
売り上げが12億ちょっとくらいで、社員数も100名以内ぐらいで上場したと思うんですけど、それぐらいのレベルであったら、もう全く苦労がないという感じでしたね。
- 大野
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12億で100人弱。
- 安藤
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100人弱だと思いますね。
もっと少なかったかな、50〜60人でしたかね、多分。
上場で得た、日本発の識学の社会性獲得
- 大野
-
上場会社ってすごく面倒でしょ。
社外取締役を雇わなきゃいけないし(笑)、いろいろな手続きがとても面倒ですよね。
現在、上場した甲斐があったと思ってらっしゃいますか。
- 安藤
-
それは良かったと思っています。
それ以外に選択肢はなかったと思っていますね。
- 大野
-
どうしてですか。
- 安藤
-
やはり僕らの一番の上場の目的というのは社会性でしたので、社会性を獲得するってこと。
要は、他のコンサルティングをやっている会社というのは、どこどこ大学のロジックを使っていますとか、アメリカで流行っているこういうのをやっています、みたいな学術とか。
あとは海外での実証にある程度の実績のあるものを仕入れてやっておられるっていう感じだと思うんですけど。
僕らは、日本発の、福富謙二先生が考えたものを世の中に広げていくとなったときに、どんなにいいものであっても、社会性がないというのが一番の課題だったので。
そういう意味で上場っていうことによって、社会性をある程度獲得できたっていうのは、非常に大きいと思います。
あとは上場後で言うと、一番はやはり僕がさぼらないといこと。
要は、上場していなかったら、別にこんなに拡大する必要もないし、こんなに収益性の良い商売をやっているわけなので、こんなに多くの人を雇わなくてもいいわけなんです。
それで10億20億の利益を出すなんて別に難しいことじゃないです、今の売上規模だったら。
なので、成長を遂げたら多分、今の売上規模だったら恐らく10億ぐらいの利益を出すのはめちゃくちゃ簡単だと思うんです。
そうしたら僕も経費に3億まで使えるわけなんで(笑)
そういう意味で言うと、やはり成長マーケットにコミットし続けるということを常に課されている状態だから、僕の評価者が明確に居続けるというのはすごくいいことだなと思います。
- 大野
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いやあ、そういうところに身を置いたっていうことが素晴らしいですね。
コンサルティングファームだったら、そこまでやる必要ないわけだから、そこまで社会性を求めてないということなんでしょうかね。
- 安藤
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目的が違うんじゃないですかね。
僕らはやはり識学の社会性を広げるってことが目的なので。
- 大野
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まさにミッションです。
重要なのは、多角化せずに一点突破
- 大野
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MIT-VFJは、シーズが多いのですが起業家を支援しています。
年に1回開催しているビジネスプランコンテストやベンチャーメンタリングプログラムで事業のブラッシュアップをしても、まだまだ先が長いわけで、皆さんそれぞれに苦労されています。
良い技術を持ちながら、失敗したり会社が伸び悩んだりする原因は様々ですが、順風満帆でやってきた安藤さんのご経験から、アドバイスがあればお願いします。
- 安藤
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僕も他のところでメンタリングとかたまにすることがあります。そのときに一番アドバイスすることは、多角化しない方がいいということです。
要はポートフォリオを増やすなと、無駄に。
1つ金脈が見つかり、マーケットニーズがある程度あって商品が売れ始めてる、という状況があるのなら、まずはその一点突破で、第1創起とまでは言わないですけど、そこが獲れるぐらいまで突き抜けた後に多角化しなさいと。
自社の強みができる前に多角化しようとすると、多角化の展開も難しいですし、多角化するということは組織の運営難易度も上がるわけです。
何か武器が増えれば、勝率が上がるみたいな錯覚をよく起こすのですが、できる限り少ない武器でいった方がいいんですよね。
でもそれを増やしちゃうんですよ、みんな。
それは本当に致命的だと思います。
僕は10人の人と話をしたら、8人9人にはそんな話しをします。
「なんで他のことやってんの?それだけやっとけよ」みたいな。
- 大野
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「<絶対これはやらない>ということを作りなさい」みたいなことを言っている人もいますね。
- 安藤
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そう、それに近いところだと思いますね。 例えば僕らでいうと、今でこそ採用の事業とかマーケティング代行とか他のファンドとかもいろいろやっていますが、上場までは本当にマネジメントコンサル1本だったので、もう本当に紙とペンだけで上場したみたいな感じなんですよ。
クラウドのサービスもほぼなかったですし。
本当にもう1プロダクトぐらいで上場してるので。
だからそれが多分正解なんですよね。
- 大野
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そこのところ、すごく強調したいと思います。
みんながこのインタビューを読んでいますので。
- 安藤
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それはもう一番ですね。
- 大野
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識学がポートフォリオを増やし始めたのはどういう決断の上でしたか?
- 安藤
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識学という1つのサービスというか、1つの業界というか、識学という何か1つの世界観がある程度世の中に浸透してきたというところからですね。
それは上場後なのですが、そこからは識学がやる採用代行とか、識学がやるマーケティングサービスとか、識学がやるファンドとなると、もう全部識学の強みを生かせるポートフォリオのサービスになってくるわけじゃないですか。
この状態になっているかどうかが重要なんですよね。
だからその前にやっちゃうとただのファンドになるわけですよ。
ただのファンドにお金が集まるかといったら、集まらないんです。
でも4年で上場した識学がやるファンドなのでお金が集まるわけだし。
これだけの急拡大に耐え得る採用をやってきた識学がやる採用代行なので、お客様も発注しようと思うわけなんです。
だからお客様から見て一定の強みというものを認識された状態でのポートフォリオを増やすというのは、もう鉄則です。
- 大野
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まさに金言です。みんなに伝えなければ!
本当に世の中にとって良いサービスならば、あとは広げるだけ
- 大野
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MIT-VFJは、ベンチャーメンタリングプログラムVMP24(今年で24回目)という制度を運営していて、12月14日の最終発表会に向けて、現在5つのチームがメンタリングで最後の仕上げに取り掛かっています。
そのファイナリスト候補の皆さん、そして日々成長に向けて頑張っている起業家の皆さんへ、応援メッセージをお願いします。
- 安藤
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ビジョンや企業理念が、本当に社会を良くするサービスであるということもだし、そういうサービスだと思っているということ。
そして、少ない事例であったとしても、本当にそのサービスによって、お客様にご自身がイメージするような変革をもたらすことができているという実績がちょっとでもある状態であれば、目の前のうまくいかないことというのは誤差に過ぎない。
もちろんベンチャーは生き残っていかなきゃいけないと思うんですけど。
一喜一憂せずに、ビジョンに到達するということを目指して、日々コツコツ足を動かし続ければ、本当に正しいことをやっていれば、どこかで必ず反応が変わる瞬間がやってくると思うんです。
そこが一番大事というか。
本当に世の中にとって良いサービス、良いことをやっていると自分が心から思えるかどうかと、それによって変化変革を実感いただいたお客様が何社かでもいるという状態がもしあるのならば、あとは広げるだけです。
- 大野
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最初のお客様を持つ、それが結構大きいですね。大事ですね。
- 安藤
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それは本当にね、仮説から検証されて実績に変わる瞬間なので。
いわゆる01の瞬間というところまでは、それこそパーフェクトな意思決定じゃないですけど、高速にPDCAを回して、これで本当にお客様を幸せにできるというところまで到達できるかどうかというのは、実行のスピードを上げていくしかないですよね。
- 大野
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あと皆さん、小手先の戦術に走りすぎて、戦略が立ってない人が多いですよね。
- 安藤
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そうですね。
だからまさに戦術に走るということは、心からお客様にとって良いサービスが出来上がっていないことの証拠じゃないですか。
戦術なんて後からできるし。
社会にとって本当に良いサービスができるかどうかというところもチェックしないと、それがない限りは、初めに戦術が少し当たって売り上げが上がったとしても継続はしませんのでね。
- 大野
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そうですね。
今日は本当に貴重なお話をたくさんありがとうございます。さすが安藤社長!、ますますのご発展を!!!
安藤 広大(あんどう・こうだい) 氏 プロフィール
組織マネジメントの専門家。
1979年生まれ。
早稲田大学卒業後、NTTドコモ入社。
2006年ジェイコムホールディングス入社。
主要子会社のジェイコムでは取締役営業副本部長などを歴任。
2015年3月識学を設立。
2019年2月東証グロース市場上場。4,500社が導入しているマネジメントコンサルティングサービスを展開している。『リーダーの仮面』『数値化の鬼』『とにかく仕組み化』(いずれもダイヤモンド社)の累計発行部数は150万部以上。